「チームの生産性が伸び悩んでいる」「指示待ちのメンバーが多く、自分がボトルネックになっている気がする」「このままのマネジメントで、次世代のリーダーとして成長できるだろうか」
あなたの悩みは、多くのエンジニアマネージャー候補・中堅エンジニアが直面する共通の壁です。
技術の進歩が速い現代において、マネージャー一人がすべてを把握し、指示を出す「トップダウン型」のチームは、必ずどこかで停滞を迎えます。
メンバーは指示を待つようになり、あなたは常にタスクに追われ、最も重要な「未来への投資」である戦略立案の時間が削られてしまうのです。
この記事では、停滞感を打破し、チームメンバー一人ひとりが当事者意識を持って行動できる自律的チームへの変革ロードマップを、あなた自身のリーダーシップ強化という視点に合わせて徹底解説します。
自律性とオーナーシップを強化する3つのフェーズ
チームの停滞は、一夜にして起こったものではありません。しかし、適切な手順を踏めば、必ず自律性を引き出すことができます。そのロードマップは、以下の3つのフェーズで構成されます。

Gallup社の「State of the Global Workplace」レポートによると、エンゲージメントが高く、自律的なチームは、一般的なチームと比べて生産性が最大で21%高いそうです。
停滞を打破し、数字で結果を出すためには、自律性の強化が不可欠です。
なぜ「指示待ち」状態のチームになるのか?停滞の背景と現状
まずは、チームが「指示待ち」状態になるのか、その構造的な原因を理解しましょう。これはマネージャーの能力の問題ではなく、マネジメントの「構造」に原因があります。
📍無意識のマイクロマネジメントが原因
マネージャーが一番技術に詳しいことがチームの自律性を最も阻害する要因になり得ます。
「早く終わらせたい」がために、無意識のうちに「自分でやった方が早い」ループに陥っていませんか?例えばこんなシーンを考えてみてください。
- メンバーが質問に来る。
- 教えるよりも、自分で修正指示を出したり、コードを書いてしまったりする。
- メンバーは「質問するより、まず指示を待とう」と学習する。
- マネージャーはさらに忙しくなり、ボトルネックが強化される。
このループは、善意と優秀さが生み出す、最もやっかいな停滞の要因になります。
📍オーナーシップを阻む「失敗を恐れる文化」
エンジニアリングの本質は、実験と失敗の繰り返しから学び、改善していくプロセスにあります。
しかし「プロセスではなく結果責任」として扱われていないでしょうか。例えば、以下のようなシーンはありませんか?
- 新しい技術を導入してトラブルになった際、原因究明よりも「誰のせいか」が重視される。
- コードレビューで、コードの改善ではなく、人格や能力に対する否定と受け取られるフィードバックがある。
こうした文化では、メンバーは「無難な選択」「過去の踏襲」を選び、挑戦や自発的な提案というオーナーシップの芽は摘み取られてしまいます。
【誤解されやすいポイント】 ポストモーテムと非難の境界線
「ポストモーテム」は、本来、再発防止のためにプロセスを検証する場です。しかし、これが「誰がミスをしたか」を特定する非難の場になっていないか、マネージャーは常に注意を払う必要があります。重要なのは、「人」ではなく「システム(プロセス)」の欠陥に焦点を当てることです。
📍曖昧な責任範囲
特定の機能や技術領域の知識・責任が、一握りのメンバーに集中している状態を、技術コミュニティではバス係数が低いと表現します。
バス係数が低い(=特定のメンバーがいないとプロジェクトが止まるリスクが高い)状況は、オーナーシップを著しく損ないます。
なぜなら、「責任を持つべき人」が常に明確であり、それ以外のメンバーは「言われたことをやる」役割に甘んじてしまうからです。属人化は効率的である反面、メンバー全体の自律的な成長とオーナーシップを奪う仕組みとして機能します。
ここから、指示待ちチームを自律的チームに建て直す、3つのフェーズを解説します。
【フェーズ1】「心理的安全性」の再確認と目的共有
停滞の背景を理解した今、最初に取り組むべきは、何よりも「心理的安全性」という土台を固めることです。
📍失敗の学習資産化を徹底する具体的な進め方
「非難なきポストモーテム」を機能させるためのマネージャーの質問技術
失敗を学びとして活かすには、マネージャーが「Why」ではなく「What, How」に焦点を当てた質問を徹底することです。
- ❌:「なぜあなたはあの設定ミスをしたのですか?」(Why) → 非難・防御姿勢
- ⭕:「何が起こったかを時間軸で教えてください。」(What) →事実の把握
- ⭕:「次に同じことが起きた場合、システムとしてどのように防ぐことができますか?」(How)→改善策の提示
これにより、「失敗を共有すれば、非難される代わりに、チームの知恵になる」という共通認識が生まれます。
現場あるある: レビューで人格否定と受け取られないためのフィードバック文化の作り方
コードレビューは、技術指導と心理的安全性確保の最も難しい接点です。
- 「Iメッセージ」を使う: 「あなたのコードは〜」ではなく、「私はこの実装を見て、〜というリスクを感じた」
- 「目的」に立ち返る: 「この実装だと、私たちが目指す高速なパフォーマンスと整合しないかもしれない」
- ポジティブなフィードバックを意図的に増やす: 改善点だけでなく、優れた点も指摘し、信頼残高を積み上げる。
📍「目的」の共有:「What」から「Why」へのシフト
自律性は、「何をやるか(What)」だけを伝えるのではなく、「なぜそれをやるのか(Why)」を共有することで初めて生まれます。
OODAループやOKRなどのフレームワークを例に、具体的な目標設定と連携の解説
たとえば、OODAループ(Observe, Orient, Decide, Act)の「Orient(状況判断・方針決定)」の部分をチームで共有することに重点を置きます。OKRを導入する際も、単なる数値目標(KR)の達成に留まらず、「なぜこの目標(O)が顧客にとって重要なのか」をメンバー全員が腹落ちするまで対話しましょう。
「顧客価値」を可視化する
「Why」を肌で感じる最も効果的な方法は、「顧客」と「現場」の距離を縮めることです。顧客ニーズの解像度をあげるために、以下のようなアクションが推奨されます。
- サポート問い合わせにエンジニアが同席する
- 顧客からのフィードバックを、スプリントの開始時に必ず読み上げる
- 開発した機能が実際に顧客の課題を解決した成功事例を、定例ミーティングで発表
これにより、「誰のための開発か」が明確になり、自発的な提案が促されます。
【フェーズ2】自律性を高めるための権限委譲と範囲の明確化の技術
土台が整ったら、次はいよいよ権限委譲です。権限委譲は丸投げと誤解されがちですが、そうではありません。
📍具体的な境界線の引き方
技術選定の迷い:「コア技術」と「周辺技術」で決定権を分けるという考え方
すべてをメンバーに任せるのではなく、チームの「コア」となる技術と、「周辺」な技術で、権限の境界線を引くことが現実的です。

権限委譲と丸投げの違いを明確化する
権限委譲は、「決定権の委譲」であり、「責任の放棄」ではありません。マネージャーは意思決定のプロセスに対しては、モニタリングとコーチングの義務が残ります。メンバーが判断に迷ったり、コア技術に影響を及ぼしそうになったりした場合に、すぐに相談できる体制を保証することが、丸投げとの決定的な違いです。
📍意思決定プロセスの可視化させ、シニアエンジニアの役割を変える
自律的なチームでは、意思決定のプロセスがブラックボックスであってはなりません。
Tech Reviewを「承認の場」ではなく「育成と参画の場」にする方法
Tech Reviewの目的を、「マネージャーが承認するか否か」から、「提案されたソリューションの技術的・ビジネス的リスクを、チーム全体で検討し、全員で学びを得る」ことにシフトします。
シニアエンジニアがチームにいる場合、その経験を活かし、提案者に対して「過去の失敗例」や「代替案のリスク」を教えるコーチ役として振る舞ってもらうとよいでしょう。これにより、シニアエンジニアも指示者ではなく育成者としてのオーナーシップを持つことができます。
【実務者目線での経験知】 意思決定が遅れることのデメリットを回避する「Asynchronous Decision Making」の導入
定例会議での議論待ちがボトルネックになるのを防ぐため、ドキュメントベースの非同期的な意思決定を導入します。
これにより、メンバーは自分のタイミングで意思決定に参加でき、「会議に出席できないから決められない」という自律性を阻害する要因を排除できます。
【フェーズ3】オーナーシップを定着させる「責任の拡大」とマネージャーの役割転換
最終フェーズでは、権限とセットで責任の範囲を拡大し、真のオーナーシップを定着させます。
📍「You Build It, You Run It」原則を導入する際の落とし穴
「作った人が運用も担当する」というDevOpsの原則は、オーナーシップを劇的に高めます。しかし、これには適切な準備が必要です。
監視とオブザーバビリティの誤解されやすいポイントと、必要なツールのセットアップ
単なる「監視」だけでは不十分です。「オブザーバビリティ」を実現するための適切なログ、メトリクス、トレースツールの導入が必須です。これがなければ、運用責任は単なる「アラート対応」という負担増で終わってしまいます。
オンコール体制における負担増大への対応策
運用責任は、メンバーの負担増となり、離職の原因にもなり得ます。
- チームローテーション: 特定のメンバーに負荷が集中しないよう、公平なローテーション体制を敷く。
- インシデント報奨制度: 深刻なインシデント対応を行ったメンバーに対して、金銭的または時間的な報奨を行う。
- 運用を楽にする開発への投資: 運用で発生した工数を「負債」として可視化し、それを削減するための開発タスクを全体の20%程度確保する。
📍マネージャーは「指示者」から「コーチ」へ
自律的なチームのマネージャーは、もはやタスクの割り振りをする「プロジェクトマネージャー」ではありません。メンバーの潜在能力を引き出す「コーチ」へと役割を転換します。
コーチングに役立つGROWモデルの実践的な使い方
GROWモデル(Goal→Reality →Options →Will)は、メンバーの自発的な解決を促します。
- Goal: 「この課題をどうしたい?」
- Reality: 「現状、何がうまくいっていて、何がボトルネック?」
- Options: 「この問題を解決するために、どんな選択肢が考えられる?」
- Will: 「その中で、最初の一歩として、いつまでに何をする?」
【専門家としての注意点】 「チームが自律した」と断定する前に確認すべき3つの指標
マネージャーの体感が先行する前に、以下の客観指標を確認しましょう。
- 自発的な問題発見/提案: マネージャーからの指示を待たずに、システムやプロセスの改善提案がチケット化されているか。
- チーム外連携: 他部署や外部ステークホルダーとの連携を、マネージャーを介さずにメンバーが主体的に行えているか。
- 内省の質: 定例の振り返りで、「マネージャーに言われたからやった」という発言が減り、「チームとして、次はこう改善しよう」という提言が中心になっているか。
女性エンジニアのキャリア視点で考える、自律的な働き方とマネジメント
📍女性エンジニア特有の課題と自律性の文脈
パートタイムや短時間勤務など、多様な働き方における「責任の曖昧さ」の解消が、逆にオーナーシップを高めます。
家庭の事情やライフイベントにより、勤務時間に制約がある場合、「フルタイムのメンバーと同じ責任を持てない」という遠慮や自己評価の低下が生じがちです。ここで、「勤務時間」ではなく「成果物に対する責任」を明確に定めることが重要です。
- 勤務形態に関わらず、担当領域の「決定権」と「運用責任」をセットで委譲する。
- 成果に対して責任を負うことで、「時間がない」ことによる引け目が解消され、自律的な働き方が可能になります。
「いつやるか」は個人に任せるが、「どういう品質と結果を出すか」は責任を持つ。この等価交換こそが、女性エンジニアが自律的に長期的なキャリアを描くための鍵となります。
よくある質問
Q1. メンバーに権限を渡した結果、品質が下がった場合はどうすべきですか?
A. これは権限委譲が丸投げになっていたサインかもしれません。直ちに権限を剥奪するのではなく、以下のプロセスを踏んでください。
- 非難なく事実を共有する: 「今回の品質低下は、顧客への影響が大きい」という客観的な事実のみを伝え、感情を挟まない。
- 責任者に「Why」を問う: 「どうすれば、この品質の問題を未然に防げたか?」を問い、本人に改善案を出させる(GROWモデルのReality →Options)。
- モニタリングの強化: 権限委譲したまま、レビューの粒度を一時的に上げる、あるいはシニアメンバーによるペアプログラミングを促すなど、「安全網」を強化します。権限委譲は継続しつつ、サポート体制を手厚くすることが重要です。
Q2. シニアエンジニアがコーチングに協力的でない場合の対策は?
A. シニアエンジニアは技術的貢献を求められることに慣れており、育成へのモチベーションが低い場合があります。以下の方法で役割を再定義してください。
- 育成を評価指標に組み込む: 評価制度に「若手エンジニアの育成/技術的成長への貢献」という項目を明確に追加し、正当に評価する。
- 「コーチングは自己成長」と伝える: 若手に教える過程で、自分の知識の曖昧な点が明確になったり、より抽象度の高い視点が得られたりすることを伝え、コーチングが彼ら自身のキャリアアップに繋がることを示唆する。
- Tech Reviewでの役割を明確化: 彼らに「承認者」ではなく「技術的リスクのアドバイザー」という立場を与える。
Q3. 自律的なチームは、トップダウンの経営判断にどう対応すべきですか?
A. 自律的なチームは「経営判断の意図を理解し、その中で最善の実行方法を自ら決定する」能力に長けています。
- 「Why」を明確にする: 経営層からの指示があった際、マネージャーはまず「なぜその判断が必要なのか」という背景(Why)を、できる限り透明性を持ってチームに共有する。
- 実行フェーズを委譲: 「トップダウンで決定されたGoal」に対し、「達成するためのReality →Options →Will」はチームに委ねる。
- 提言の機会を設ける: 経営判断に対し、技術的な視点から懸念点や代替案があれば、マネージャーを介して提言する仕組みを維持する
まとめ
チームの停滞は、あなたが次のステージへ進むためのシグナルです。自律性への変革は決して楽な道ではありませんが、メンバーのオーナーシップが花開いたとき、あなたは真のリーダーとしての手応えを感じるはずです。さあ、一歩踏み出し、停滞を打破するチームをあなた自身の手で作り上げましょう!
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